かつてはデジタルカメラで大きな収益を上げていたキャノン、ニコン、オリンパス等のカメラメーカーですが、昨今のスマホの高性能化によるあおりを受けてデジカメ分野の売上が激減してきました。
そんな日本のカメラメーカーですが、昨今はそのビジネスの矛先を一般用カメラから医療分野に変えてきています。
各社デジカメ分野での収益にはさほど期待していない
意外と思われるかもしれませんが、デジカメメーカーは既にデジカメ市場にほとんど見切りをつけています。
例えばキャノン会長の御手洗富士夫氏は2018年12月発売の『週刊ダイヤモンド』でデジカメ市場についてこのようにコメントしています。
キャノン御手洗社長:
・・・10年後などの将来には素人向けのカメラ市場は消滅し全部スマートフォンに置き換わる可能性も高いと思っています。
またニコンの牛田一雄社長も同じ12月発売の週刊ダイヤモンドで、
ニコン牛田社長:
(今後のカメラ市場は)大幅な反転も縮小が止まることもないということは、すでに経営の前提です。
と、将来的なカメラ市場の縮小を強く予感しています。
このように既に企業のトップがほとんどデジカメ市場には期待していないことが分かります。
実際、映像事業(デジカメなどのこと)に対する研究開発費は年々減少傾向にあります。
例えばニコンを例にとると、2014年には284億円投じていた研究開発費が、2018年には234億円と約50億円も減少しています。
医療分野への進出
カメラ市場の縮小を受けて、各カメラメーカーがどのような戦略をとったかというと、医療・ヘルスケア分野への進出です。
医療という領域は今後なくならない分野ですし、日本の高齢化社会でもみられるように、世界的にも医療機器に対する需要は増大しています。
そういうわけで、例えばニコンの例をとると、医療・ヘルスケア分野に2016年に進出し、以降順調に研究開発費を伸ばしています。
研究開発費:36億円(2016) → 38億円(2017) → 80億円(2018)
オリンパスも2018年に医療分野のベンチャー企業に対して富士フィルムとともに約30億円出資しました。
人工知能(AI)などによる医療画像診断などの技術を開発している会社です。
『エルピクセル』という名前です。
業界No.1のキャノンに関しては『東芝メディカル』を買収するなど、競合他社とは一線を画す規模の投資(M&A)を行っています。
今後も4000億円に迫る規模の投資を医療分野に行うとキャノン社長自ら明言しています。
既に売上のかなりの割合を占める医療分野
で、実際に現在どれぐらいの医療分野の売上があるかというと、2018年のデータ(最終見通し)ですとニコンで8.5%、キャノンで10.9%、オリンパスに至っては実に78.4%が医療分野での売上です。
オリンパスはもはや医療機器メーカーと言っても全く過言では有りません。
内視鏡などを中心に、売上のほとんどを医療分野で稼いでいます。
今後
元々、国内カメラメーカーは光学技術に関して世界でも圧倒的な技術力を持っていました。
例えば日本企業が世界のデジタルカメラ市場でシェア断トツのNo.1を誇っています。
(約8割は日本企業のシェア。No.1はキャノンで約5割。)
その技術力を、今度は医療に役立てようとしています。
キャノンなどのカメラ大手各社は医療分野の企業を買収するなど、かなり積極的な投資を見せているため間違いなくよりヘルスケア領域の研究開発に注力してくるでしょう。
加えて、技術革新の著しいAI技術との融合なども、各社ともに力を入れてるため、今後の発展がとても楽しみですね!
参考
キャノン、ニコン、オリンパスの社長に対するインタビューが載っていて、今後の事業方針など見ごたえがありました。