業界研究/企業分析

【就活】化学系の専門別就職力ランキング【有機・無機・生物系etc】

化学系の就活

大学生にとって研究室選びは重要です。
なぜなら、研究室で学ぶ専門スキルによって就職に強い/弱いがあったり、向いてる業界などが限定されたりするためです。
そのため、進みたい業界が明確な学生は、注意して研究室を選ばなけれななりません。
そこで、この記事では専門分野による各業界への就職しやすさを独自に分析・考察し、ランキング形式でまとめてみました。

専門分野によるランキング

1位:高分子化学系

高分子系は最も企業ニーズがある

総合化学 ★★★★★★★★★☆(10点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★★★★★☆(10点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★★★★★★(10点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
食品 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★★★★★★(10点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★★★★★★(10点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 90点

高分子系の学生は非常に就職力が強いです。
理由は高分子という素材の社会的ニーズが大きいためです。
身の回りにあるモノのほとんどが高分子(=樹脂)です。プラスチックやゴム、服、車のカバー、接着剤・・など上げれば本当にキリがありません。我々の社会では、高分子製品でさ溢れています。
今後もさらに高機能な高分子製品というのが社会に求められているので、高分子の知識に長けた人材は今後も需要がなくなることはないでしょう。

加えて、そのような状況にあるにも関わらず、高分子系の研究室の数は有機化学の研究室などと比較するとそれほど多くありません。
そのため希少価値もあり、就活だけのことを考えたら高分子系の研究室がかなりおススメです。

特に東レや帝人などの繊維メーカーや、ブリヂストンなどのタイヤメーカー、様々な樹脂を開発している総合化学メーカーなどに大きなニーズがあります。
同時に、東レリサーチなどの分析会社にとっても高分子製品の分析は重要なので、高分子の性質を深く理解している人材というのは求められます。

高分子は社会でもっとも活躍している化学素材。
高分子系研究室の同期はほぼ全員が大手行ってました。
東レ, ブリヂストン, 積水化学 etc
高分子と言えば東レなどの炭素繊維などが有名。
鉄の5倍軽くて6~7倍も強度が強い。
リチウムイオン電池などの電解液セパレーターで使用される“膜”技術もクリーンエネルギーと絡めて重要です。



2位:有機合成系

有機合成は就職に強い

総合化学 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★★★★★★(10点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
食品 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 82点

有機化学系は昔から就職に強いことが有名です。
有機合成がきちんとできる人なら就職で困ることはありません。
有機合成は化学の基本です。
新規物質の合成効率的・経済的な合成ルートの発見安全な合成方法の確立など、企業が有機化学者に期待する領域は多数存在します。
製薬に関しても有機合成の知識が必須なので、化学系にも関わらず製薬業界に就職する人もかなりいます。ただしそこは薬学系との競争がありますので、有機合成だから最強というわけにはいきません。
しかし、大手総合化学メーカーや素材メーカーなどから、引く手あまたな状況と言えます。

懸念事項としては、昨今環境面や健康面への規制の強化から、新規化学物質の認可にかなりの時間と資金が必要となっています。(キーワード:METI, 化審法 etc)

有機合成のニーズがなくなることは有りません。

3位:無機・錯体化学系

今後の社会で必要不可欠

総合化学 ★★★★★★★★★★(10点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
食品 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 75点

先入観で『無機系は就職が悪い』と思っている人も中にはいますが、全くそんなことは有りません。
昨今、クリーンエネルギーの開発が社会的に求められ、太陽光発電や燃料電池などの研究が盛んに行われています。
その技術には、半導体、電極、触媒などの無機材料が中心に使用されています。

太陽光発電に限らず、触媒技術というのは至る所で使用されており、例えば石油化学における『原油中の硫黄の除去』などにも触媒が関わってきますし、様々な薬剤の開発の際に『特定の反応だけ行わせたい』『もっと反応効率を上げたい』という時にも触媒が使われます。
触媒は大抵無機素材であるので、その設計に際して金属錯体化学などの無機化学の専門家は必要とされます。

今後、政府の掲げる『脱炭素社会』の実現に向けて最も必要とされるのは、無機系人材かもしれません。
(キーワード:水素社会, 燃料電池, リチウムイオン電池, 太陽光発電)

ただし、繊維や素材系、製薬系、ゴムなどの樹脂系などの業界に対しては、有機・高分子系と比べて少し落ちます。

燃料電池・電気自動車・太陽光エネルギーなど無機材料が大活躍する未来がすぐそこに!
歯科材料も無機系であり、世の中には無機材料がたくさん活躍しています。
肥料原料も多くが無機系です。リンなどが使われます。
LEDなどの発光素子も無機材料です。




4位:分析化学系

分析化学は化学の基本

総合化学 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
食品 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★★★★★★(10点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 68点

基本的に全ての研究で分析機器を使用するので、分析化学的知識に長けた人材というのは一定のニーズがあります。
分析化学系の会社からは当然ですが強いニーズがあります。
それ以外は、とりわけ強い分野があるというわけではないですが、分析化学の基礎力を活かして大抵の分野の企業に進むことが可能です。
製薬メーカーなども全員が合成を行っているわけではなく、品質保証などの業務もあるので、需要がない分野は無いと言えます。

分析をやっていたから有利ということは少ないかもしれませんが、色々な分析手法を知っていたり分析装置を扱えることはアピールポイントになります。

5位:化学反応論系

反応プロセスの解明・設計

総合化学 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★★★★★☆(9点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
食品 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 65点

本格的に反応プロセスの解析や設計から開発を行う企業で需要があります。
大手総合化学メーカーなどから特に必要とされています。
研究開発資金があり体力のある大企業であればあるほど、ニーズがあります。
一方で、それほど本格的な化学が必要とされない傾向にある、一部の『食品』や『トイレタリー』分野への就職にはメリットはないと言えます。

総合化学メーカー大手などの大企業で最も必要とされています。

6位:生化学系

化学系&薬学系との闘い

総合化学 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
食品 ★★★★★★★☆☆(8点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 57点

生化学系は少し化学メーカーへの就職という点ではメリットが少なくなってきます。
一番マッチングする領域は『食品』『製薬』『化粧品』などになりますが、これらの企業は募集人数自体が少ない上に、純粋な化学系や薬学系などのライバルが多いため容易では有りません。
ユニ・チャームなどの『ポテンシャル採用系』の会社では、分野のデメリットはないですが生化学を専攻していたからと言ってメリットもあまりありません。

ENEOSや出光興産などの石油化学会社では『バイオ燃料』や『ビタミン』などの生物系の研究も行っていたりしますが、あくまでサブ的位置づけとなっています。

生化学でも『生物寄り』の生化学か、『化学寄り』の生化学かでだいぶ違いますが、生物寄りの場合は専攻のメリットを活かせることが少なくなることがあります。

生化学とマッチングする企業は企業数や募集人数が少ないことが多いです。
糖鎖の仕組みなど、学問的には非常に興味をそそられます。

7位:熱化学系

アカデミックタイプ

総合化学 ★★★★★★☆☆☆☆(6点/10点満点中)
石油化学 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
食品 ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
化粧品 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
化学分析 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 50点

熱力学などの理論系の研究室の場合、就職活動は『ポテンシャル採用』になります。
つまり、研究内容をそのまま活かせる企業というのは少なくなってきます。
どのような化学研究も熱力学的側面は必ずあるのですが、企業では製品開発がメイン業務なので、そこまで理論面に傾倒するわけではありません。
そのため、『熱力学的なバックグラウンドはを活かしつつ他の分野にも挑戦します』というスタンスでないと厳しいと思われます。

熱化学を熟知している人材は少ないので、そこはアピールポイントになります。

8位:量子化学・シミュレーション系

理論系はポテンシャル採用

総合化学 ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
石油化学 ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
原料・素材 ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
製薬・医薬品 ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
食品 ★★★☆☆☆☆☆☆☆(3点/10点満点中)
日用品・トイレタリー ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
ゴム・タイヤ ★★★★★☆☆☆☆☆(5点/10点満点中)
製紙・パルプ ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
化粧品 ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点/10点満点中)
化学分析 ★★★☆☆☆☆☆☆☆(3点/10点満点中)
総合評価(100点満点) 40点

量子化学系などのパソコンを使ったシミュレーションを行う研究室というのは、化学メーカーへの就職という点ではややデメリットが大きいと言えます。
それは何故かというと、企業で化学シミュレーションを行う会社は一部の体力のある大企業に限られることなどが挙げられます。
また化学メーカーの研究開発は基本的には『実験』することで何かを見出すことが多いですが、量子化学系の研究室では自分の手で実験することは稀です。
そのため、企業としては理論系の学生は採りにくいというのがあります。
ただし、全くニーズがないわけではないので、企業研究をよく行うと良いと思います。

化学系の大企業では一定数プログラミングのできる化学系学生のニーズがあります。例えば横浜ゴムなどのタイヤメーカーや、ライオンなどの化学大手など。



ランキングまとめ


就職力ランキング

  1. 高分子化学系
  2. 有機合成系
  3. 無機・錯体化学系
  4. 分析化学系
  5. 化学反応論系
  6. 生化学系
  7. 熱化学系
  8. 量子化学・シミュレーション系

やはり、高分子系や有機化学系などは就職でも強いです。

日本の化学産業は高分子、つまり繊維や樹脂といった製品を開発している企業が多いため、高分子をしっかり学んだ人材は各分野でニーズがあります。
化学産業は新しい化学素材の開発が求められる業界であるので、『合成』の技術を持った人材というのはどの分野でも必要とされています。

理論系の学生は基本的にはポテンシャル採用になりますが、他の人材にはないスキルを有しているという点で差別化が可能です。

参考

・総合化学メーカー(住友化学、宇部興産、三菱ケミカル etc)
・石油化学メーカー(ENEOS、コスモ石油、昭和シェル石油 etc)
・原料・素材メーカー(東レ、トクヤマ、日本触媒 etc)
・製薬・医薬品メーカー(武田薬品、アステラス製薬、塩野義製薬 etc)
・食品メーカー(味の素、ヤクルト、日清食品 etc)
・日用品・トイレタリーメーカー(花王、ライオン、ユニ・チャーム etc)
・ゴム・タイヤメーカー(ブリヂストン、住友ゴム、横浜ゴム etc)
・製紙・パルプメーカー(日本製紙、王子製紙、大王製紙 etc)
・化粧品メーカー資生堂、ポーラ、コーセー etc)
・化学分析会社(住化分析センター、東レリサーチセンター、㈶化学物質評価研究機構 etc)



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