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【企業分析】住友商事の「鋼管事業」とは

鋼管事業は住友商事が伝統的に力を入れていた主力事業の1つです。
役員もこの事業部から数多く輩出しています。
一方で、この事業を理解しようとしても”鋼管”とはあまり聞きなれない単語ということもあり、いったい何を行っている事業なのか、いまいちピンとこない場合が多いと思われます。
この記事は住友商事の鋼管事業について、詳しく見ていきたい思います。

「鋼管」とは

まず鋼管って何なのかを説明しなければいけません。
鋼管とは、”鉄配管”のことです。

特に工場の配管や石油掘削などの場面で使われるものを指す場合が多いようです。

油井管

住商のビジネスの場合、石油採掘などの領域が強いです。
そのような場面で使用される鋼管は、”油井管“と呼ばれます。

石油
天然ガスシェールガスシェールオイルなどの掘削などで使用される鋼管を油井管と呼びます。地下に埋まっているこれら資源を、地上に運ぶための配管のことです。

油井管の写真
住商は油井管が強い。
油井管の使用場面(天然ガス)


(引用元:JFEスチールHP)

石油や天然ガスなどの化石燃料資源に対しては、高いレベルの耐腐食性が必要とされています。それらに含まれる硫黄などの成分が腐食を引き起こすためです。
新日鐵住金(日本製鉄)製の高品質な油井管を販売していました。

その他

原油や天然ガス、シェールガス(オイル)をプラントまで運ぶパイプラインや、液化天然ガス(LNG)を運搬するパイプラインなどにも、鋼管が使用されます。
またそれらを溜めておくタンクにも鋼管が使用されます。

鋼管まとめ
  • 地下の油やガス資源を掘削のために必要な油井管
  • 掘削した油やガスを輸送するパイプライン
  • それらを溜めておくタンク

住商の鋼管事業ビジネス

住商は石油天然ガスの採掘の場面で使用される鋼管、つまり油井管のビジネスがメインです。化石資源の採掘に使用される鋼管の販売で、巨額の利益を上げてきました。
住商のHPに詳しく記載されています。

当社のエネルギー産業向け金属製資機材ビジネスは大きく3つに分けられます。1つ目が、石油・ガスを地下から汲み上げるパイプ(油井管)。2つ目は、油井管の隣接分野である油井・ガス井用資機材・サービス。そして3つ目が、汲み上げた石油・ガスを遠隔地まで送るために使用されるパイプ(ラインパイプ)のビジネスとなります。

当社は、エネルギー産業向けの、鋼管を中心とした金属製資機材の事業に長い歴史と大きな実績を持っています。日本では石油・ガスの生産規模が小さく、油井管やラインパイプといった商品のマーケットは限定的ですが、世界的には膨大な需要があります。使用環境が過酷であるため顧客からは厳しい要求がありますが、高い技術力を持ったメーカーの支援のもと、高品質の商品に当社ならではの付加価値、サービスをくみ合わせて提供し、高い評価を得ています。
(住商HPより)

事業部門

住商の鋼管事業は、事業部門としては【金属事業部門】の中の1つの事業にあたります。
(2021年11月時点)

ちなみに金属事業部門の中には、鋼管事業の他に「鋼材事業」もあります。

ビジネス

ビジネス地としては、”北米”が中心です。
北米は「シェール」の開発が盛んです。
なので、住商のビジネスとしては、北米における開発の動向が重要です。
住商の鋼管事業の売上に大きく関係します。

重要な点として、リグ稼働数が増えれば売上・利益は伸びます。
(油井管などがたくさん使用されるため)

シェール掘削機数(リグカウント)を見ることが基本です。

また、シェールのリグ稼働数は、基本的に原油価格が上がれば上がるほど増加します。

これらから明らかなように、鋼管は事業としては”非資源事業”に分類されますが、実質的には資源ビジネスの1種と言えます。

方法

業務としては日本製鉄などから鋼管を買って、北米で売るトレーディング業務があります。
そのほか、現地企業を買収して、現地で作って現地で売る、というパターンもあります。

またかつては鋼管をあらかじめたくさん在庫として用意しておいて、客先から要望があればすぐに出せるようなビジネスモデルを組んでいましたが、それが災いして2019年度に巨額の在庫評価損を生み出したため、現在はあまり在庫を持たないビジネスモデルに転換しています。

売上&利益

金属事業全体の利益は以下のようになります。

2021年度見通し(2Q決算より)

住友商事の部門別利益(2019年度2Q)
金属事業の利益は229億円でした。(2Q)
これは全体の利益の9.5%となっています。
(今期は資源高で「資源・化学品」部門がかなり大きくなっています。)

そのうち、鋼管事業が占める割合はどれくらいでしょうか?
かつて鋼管事業の純利益は、金属事業部門の中で4~5割ほどを占めていましたが、近年は部門全体の2割強に低下していると言われています。

2019年度決算説明資料より
住友商事の鋼管事業利益

――従来は利益のかなりの部分が鋼管でしたが、鋼管・鋼板比率に変化がありそうです。
「鋼管が落ちてきているので素直に喜べないが、バランスとしては良い形になっているとも言える」

(引用:住友商事、商社鉄鋼製品で利益トップ。堀江誠常務(金属事業部門長)に聞く(2016年1月))

ただし、前述のようにリグカウントが増えてくれば、鋼管事業の利益は増大するので,私は今後の資源高次第では、以前のレベルに近づく状況もあり得ると考えていま思います。

今後の見通しは?

現在、上下はしていますが、原油価格は上昇基調です。
それに伴い、シェール掘削機の数(リグカウント)も増えてきています。

シェールは環境面での負荷が高いため、かつてほどの規模には戻らないと言われていますが、少なくとも今後の原油高の継続次第では中期的には比較的安定した水準の利益が見込まれると考えています。

まとめ

住友商事の鋼管事業について解説しました。
鋼管事業は”非資源ビジネス”に分類されていながら、実際は油井管といった石油採掘の場面で使われる製品を販売しており、資源ビジネスにも密接に関連している点が興味深いところです。
一時は資源価格下落により赤字に転落していましたが、昨今は資源価格が高騰しており業績へのインパクトが期待されます。
住商の企業分析や投資などを考えるうえで、この鋼管事業は無視することはできないファクターとなっています。

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