昨今、環境問題の観点から、石炭火力発電はなるべく使わない方向に動いていますが、IGCCの良いところは既存の石炭火力発電よりも環境性能が良いことです。
従来よりも排出する二酸化炭素が少なくすみます。
また、実際に実証試験もクリアーしており、実用化の目途も立っています。
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IGCCとは
IGCCとは「石炭ガス化複合発電」の略です。
その名の通り石炭をガス化させる工程を含んだ複合的な発電方式になります。
これまでの一般的な石炭火力は、石炭を燃やして蒸気タービンを回すだけでした。
石炭をもやした熱で水を蒸発させ、水蒸気の圧力でタービンを回し電気を作るという方法です。
しかしIGCCは、その蒸気タービンを回す工程にプラスして、石炭をガス化・燃焼させる工程があります。そこでガスタービンと言われるタービンを回し、電気を作ります。
蒸気タービンとガスタービンの2段構えになっています。
(プロセスの順序はガスタービン→蒸気タービン)
- ガス化させた石炭を燃料に燃焼させ、ガスタービンを回す
- 高温の排ガスをボイラの熱源にし、蒸気タービンを回す
(ガス化・燃焼でガスタービン→次に、その廃熱で蒸気タービン、という順序)
なので、IGCCは従来型(SCやUCSなど)と比較し発電が無駄なく効率化されています。
良い点
IGCCの良い点は、発電が効率化されている点です。
発電が効率化されている分、二酸化炭素の排出量も少なくなってます。
つまり既存の火力発電より環境性能がUPしています。
日本で一般的な火力発電方式は、SC(超臨界型圧)方式もしくはUSC(超々亜臨界圧)方式と呼ばれるタイプですが、これ方法では発電効率は38~40%、41~43%です。
IGCCはこれよりも1.2~1.3倍程度高い、46~50%となっており、発電効率が向上しています。
評価 | 種類 | 発電効率 |
非効率 | 亜臨界圧(SUB-C) | 38%以下 |
非効率 | 超臨界圧(SC) | 38~40% |
普通 | 超々臨界圧(USC) | 41~43% |
高効率 | 石炭ガス化複合発電(IGCC) | 46~50% |
(出典: 経済産業省 資源エネルギー庁 資料より)
悪い点
IGCCの悪い点を述べます。
IGCCは確かに既存の火力発電と比較すると環境性能は良くなっていますが、天然ガスなどの他の火力発電と比較すると明確に環境性能は劣ります。
それぞれの方式で作る電力辺りに排出するCO2排出量を比較すると、天然ガスの方がCO2排出量が5~6割も少ないです。
https://subarun.com/2021/10/30/coal_electric
ity_20211030/
なので、同じ火力発電を行うなら、天然ガスを使った方が断然環境にいいです。
加えてIGCCは実績がまだ少ないので、導入コストが高かったり、予期せぬトラブルに見舞われる可能性もあるかもしれません。
その点、天然ガスなら既にある火力発電施設をそのまま使うこともできるため安心です。

特に最近は世界中で需要が増加しているため、めちゃくちゃ高騰しています。
さらによい石炭火力発電は?
IGCCよりも優れた石炭火力の発電方式はあるのでしょうか?
IGFCという方式があります。
これは、IGCCにさらに燃料電池機能を組み合わせた方法です。
しかし、これにも問題点があって、まだ実証実験すら済んでいません。
(22年度からの計画)
加えて、発電効率もIGCCより5~9%程度UPするだけで、まだ天然ガスには全然勝てていません。
石炭火力発電はそのままでは天然ガスや石油に環境性能で勝つことはできなさそうです。
CCSやCCUを組み合わせないとなかなか勝つことは厳しそうです。
もしくは水素やアンモニアとの混焼も期待されます。
まとめ
IGCCについてまとめました。
IGCCは既存の石炭火力よりは発電効率が向上しており、環境負荷の小さい方式であると言えます。
また、現段階で実証試験も完了しており(大崎クールジェンPJ)、導入のハードルもそれほど高くないと考えられます。
しかし、同じ火力発電でも天然ガスを使った方式と比較すると、圧倒的に負けています。
加えて、IGCCの進化版であるIGFC方式を使ったとしても、せいぜい5~9%程度の効率化にしかならず、こちらでも天然ガス火力発電に負けています。
IGCCは確かに環境性能が向上していますが、SDGsの観点からはまだ改良の余地がありそうです。