紙需要の低減の中、厳しいビジネス環境に晒されている製紙業界。
段ボール等の売上増により恩恵を受けている企業もありますが、今後も安定した収益を確保するために各社様々な戦略を打ち出しています。
段ボール生産の増強
ネット販売が拡大した現在、製紙業界の主な収益の柱が『段ボール』です。
もはや新聞紙や洋紙などの販売高は下落の一途を辿っており、時代に即した新たな収益源を見つけなければならない状況です。
そこで、製紙メーカー各社は、各段ボールの生産力をアップさせ、コスト削減による利益の増加を狙っています。
王子製紙
2020年稼働を目途に、段ボール新工場を千葉に建設。国内最大級。
大王製紙
洋紙生産設備を板紙向けに改造。
佐光正義社長(大王製紙)「印刷や新聞用紙など洋紙の国内需要は非常に厳しい。洋紙から家庭紙や段ボール原紙など、伸びる分野にシフトしていく」(日経新聞 2018.5.31)
【板紙とは?】
段ボールに使われる厚い紙のこと。
海外戦略(M&A等)
ネット通販の発展による段ボール市場の拡大があるとは言え、日本国内の市場は既に飽和状態に到達するのは時間の問題です。
そのためさらに成長するためには海外に打って出る他ありません。
特に今後成長が予想される新興国(南米,東南アジアなど)での収益が鍵を握ります。
王子製紙
業界1位の王子製紙(HD)は、実に営業利益の7割超を海外でとなっています。
王子製紙の場合、M&Aにより買収した企業が、現地でパルプ製品などを販売し利益を上げています。
【パルプ製品とは?】
新聞、ティッシュ、ティーバッグ、雑誌など紙製品の原料となる素材のこと。
レンゴー
業界3位のレンゴーは、イギリスの段ボール包装などを行う会社を買収しました。
→ローズウッド・マニュファクチャリング・ホールディングス
次世代技術の開発
紙製品はそもそも研究開発による差別化が難しいと言われています。
最近、保湿の良い高機能なティッシュなどが開発されたりしていますが、基本はティッシュ・トイレットペーパー・新聞紙などの普通の紙です。
そのため、製紙メーカーが生き残るには、利益率の良い新しい技術を用いた製品を開発しなければなりません。
その一つがセルロースナノファイバー(CNF)です。
【セルロースナノファイバーとは?】
・鉄より7~8倍強度が強く、さらに5倍軽いという凄い素材。
・カーボンニュートラルの観点から環境にも優しい。
・政府が積極活用を目指す。

これは王子製紙、日本製紙、大王製紙など各社が取り組んでいます。
特に日本製紙は東京大や京都大との共同研究を行っており、特許数も世界1位であるなど力を入れています。
その他
バイオマス発電も重要です。
まとめ
製紙業界の今後の戦略は、
- 段ボール増産
- 海外事業
- 新技術の実用化
が重要なキーワードです。
日本市場の縮小は確実なので、海外事業や段ボールで成功した体力のある今のうちに、新たなビジネスを展開していきたいところです。