化学系の人なら『アミド』という化学用語はどこかで習ったがあると思います。
しかし、習ってから時間が経っていたりして、いまいちアミドについて理解できていない方もいるとか思います。
この記事ではアミドについて、その全体像を基礎からわかりやすく解説したいと思います。
Contents
アミドとは?
アミドとは、そのままですが「アミド結合を持った化合物」のことを言います。
分子骨格の中にアミド結合を持つような化合物のことを、ザックリとアミドと呼びます。
ではアミド結合とは?
アミド結合とはR1-C(=O)-NR2R3で表される、以下のような結合です。
重要なのは、カルボニル基(C=O)の炭素(C)に、窒素(N)が結合していることです。
カルボニル基とは言いますが、R1は水素でもOKと思われます。
水素の場合、正確にはカルボニル基ではなくアルデヒド基になりますが、例えばDMF(ジメチルホルムアミド)は、典型的なアミド化合物に分類されていますので。
アミド結合の性質
①親水性がある
アミド結合は、電気陰性度の大きい酸素(O)と窒素(N)が結合しています。
そのため極性が高く、それにより親水性が大きいという特徴があります。
②共鳴構造をとる
窒素上の孤立電子対(N:)はルイス塩基として働くことが知られていますが、アミドの場合その孤立電子対(非共有電子対)は共鳴構造に参加するため、本来の塩基性を発揮できません。
また共鳴構造のため、炭素-窒素結合は、やや二重結合性を帯びていると思われます。
(炭素原子と窒素原子の間の二重結合)
③加水分解しやすい
アミド結合は、加水分解しやすい特徴を持ちます。(特に酸性やアルカリ性環境下で。)
加水分解により、R1-COOH(カルボン酸)とR2R3NH(アミン)に変化します。
④その他:IRで同定が容易
アミド結合はIR分析で特徴的なピークをとるので、同定しやすい長所もあります。
化合物それぞれアミド結合周囲の環境が異なるため、ものによって若干ピーク波数は変わってきますが、1650cm-1ぐらいに特徴的な強いピークを取ります。
アミドの例
アミド結合を持った化合物には以下のようなものがあります。
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
親水性と疎水性の両方の性質を持ち、溶解力に優れることで有名な液体。
ポリマーなど多くの溶けにくい物質を溶かすことができる。(=良溶媒)
(もちろん、ものによっては溶かさない。)
工業スケールで様々な用途で使用される場合がある。
比較的安価でもある。
尿素
尿素はカルボニル炭素の両サイドに窒素2つが結合しています。
これもアミド化合物に分類されます。
ε-カプロラプタム
環状アミドです。
ε-カプロラプラムは工業的に重要なナイロン6の原料です。
これは、アミドが加水分解されやすいという性質を利用して、開環→重合(開環重合)を起こして高分子を合成しています。
ベンズアミド
窒素に結合したR2とR3が両方とも水素であるアミドの例です。
まとめ
よく化学の場で呼ばれる『アミド』とは、アミド結合を持つ化合物の総称であることを説明しました。
アミド結合とはR1-C(=O)-NR2R3で表される構造で、極性が高く、親水的であり、共鳴構造を取ることによる塩基性の消失(窒素)、加水分解しやすいなどの特徴があります。
また、アミドと一口に言っても、R1R2R3の種類によって様々な構造を取ります。