ケムスケッチを作っている会社について紹介したいと思います。
このブログでも時々取り上げているケムスケッチ(Chemsketch)ですが、フリーソフトでありながら、非常に高度な化学構造式の描画ができる優れもので、私自身重宝しています。
しかし、このケムスケッチというソフト、どんな会社が作っているか気になったことはないでしょうか?またなぜ無料なのでしょうか!?
この記事では、ケムスケッチの制作会社にスポットを当てて記事にしました!
Contents
ケムスケッチを制作した会社の概要
まずケムスケッチを作った会社について紹介します。
ケムスケッチは、ACD/Labsというカナダのトロントに拠点を置く海外ソフトウェア会社が作製しました。(正式名称はAdvanced Chemistry Development, Inc.,)
プライベートカンパニーで株式市場に上場はしていません。
全従業員は285人で、4,275社との取引があるようです。(2020年1月時点)
NMRやGC/MSなどの化学分析機器で使用されるソフトの開発を行っている会社です。
例えばNMRスペクトルから化学構造を予測するソフトなど。(リンク)
ACD/LABSの歴史
簡単にACD/LABSの歴史を紹介します。
年月日 | 内容 |
1994年 | カナダのトロントで事業を開始した。(初期は2名) |
1995年 | ケムスケッチやACD/CNMR Predictor, ACD/LogP, ACD/Dictionary, ACD/Tautomersを公開した。 |
1997年 | ACD/pKa, ACD/LogD Suite, ACD/Solubility、ACD/GC Simulator, ACD/LC Simulatorなどのラインナップが追加された。 |
2003年 | 日本電子(JEOL)のHPLC装置などにACD/AutoChrom や ACD/ChromGeniusといったソフトウェアが導入された。 |
2005年 | ACD/LAbsMS解析ツールが、島津の質量分析装置に導入された。
ケムスケッチの500,000ダウンロードが達成された。 |
2006年 | GSK(GlaxoSmithKline)とコラボした。 |
2008年 | SciFinderにACD/Labsの1H-NMRの構造予測ソフトが導入された。 |
2010年 | FDA(アメリカ食品医薬品局)とコラボした。 |
2011年 | ACD/Perceptaがリリースされた。 |
2013年 | ACD/Spectrusがリリースされた。 |
2016年 | ACD/MetaSenseを公開した。 ACD/Labsのオンラインストアができた。 |
参考:ACD/LabsのHP
ACD/Labsがケムスケッチを無料で販売する目的は?
ケムスケッチは無料版と有料版があり、学生や研究機関に勤める人には無料版が提供されていますが、有料版は1年間で320$(およそ3,4480円)必要です。
ここで疑問なのは「なぜACD/Labsは無料版ケムスケッチを提供しているのか?」という点です。
なぜなら有料版と比較して多少の制限があるにしても、無料版で十分に高機能だからです。
知名度アップからの自社製品拡販
理由は例えばブログでもそうですが、一般的に何かを無料で提供する目的としては、
- 付属品の販売やメンテナンスで利益を得る
- 自社の知名度をUPさせる
- 無料商品をきっかけに別の自社製品を買って貰う
といったことが挙げられます。
無料版ケムスケッチの場合、特に付属品があるわけでは無いですし、またメンテも基本的にはありませんので①は違います。
恐らく、ACD/Labsがケムスケッチを無料で提供しているのは②③が主な理由です。
ACD/Labsに関してはメイン取引相手が化学系企業でので、将来的な営業活動を想定して研究者の卵や研究者に名前を売っておきたいという思惑はあると思います。
加えて、ケムスケッチをきっかけにACD/Labsに興味を持った研究者などが、他の製品(例えば有料版ケムスケッチであったり、logPやpKaを予測するツールだったり)を購入することも狙っているはずです。
ACD/Labsのソフトウェアの特徴
ACD/Labsはスペクトルデータと化学構造を結びつけるソフトが多いです。
例えば、NMRや質量分析、IRなどのスペクトル情報から化学構造を予測すると言ったものです。分析機器のデスクトップPCにソフトとして導入されるパターンです。
→ACD/Labs’ MS Software Tools
他には、化学構造からLogPやpKaなどの予測、毒性予測などを行うソフトウェアやデータベースなども販売されています。
→Percepta
→Spectrus
自分自身ACD/Labsの製品を使っているわけでは無いので、データベースの精度などは不明ですが、結構色々な企業とコラボしているところを見ると、それなりに評価を得ているのではないかと推測されます。
参考:富士通のHPより
ACD/Labsのツイッターアカウント
最後にACD/Labsの公式ツイッターアカウントについて紹介しておきます。
Tweets by ACDLabs
フォロワー数800名(2020年1月11日時点)なので、それほど多いわけではありませんね。
主催するシンポジウムや新しく販売したソフトの宣伝などがメインのアカウントです。
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