ENEOSは事業部門として「石油・天然ガス開発事業」をもっていて世界各地で石油資源の開発を行っています。
ガソリン販売が期待できない以上、資源開発による収益はENEOSにとって非常に重要です。2021年度は約1/3が石油・天然ガス開発からの収益でした。
ところがENEOSは脱炭素に積極的ということもあり、石油関係の権益を売却する方向に進んでいます。
この記事ではENEOSが保有する権益の埋蔵量の推移を見ていきたいと思います。
石油・天然ガスの埋蔵量推移
では早速、ENEOSが保有する石油・天然ガス権益の埋蔵量推移について見ていきます。
埋蔵量の減少について、2022年は2021年の北海油田権益売却により大きく減少しています。
2017年も大きく減少していますが、これはブレイン油田(北海油田の一部)の権益売却によるところが大きいと推定されます。
経営戦略的理由
ENEOSは脱炭素に積極的です。
逆に、2040年長期ビジョンの”ありたいた姿“で示されている通り、石油・天然ガス開発は成長事業としては位置付けられてません。
“期待度”と示された縦軸の下の方に位置付けられています。(下記図参照)
石油・ガス開発事業は左端のかなり小さい円で描かれており、オレンジっぽい色で描かれた基盤事業も2040年に行くに従い期待度が減少するように読み取れるグラフとなっています。
電材素材などの『成長領域』をサポートするためのキャッシュフローの創出のみが期待されている事業であり、脱炭素を掲げるENEOSは新規の油田開発に積極的でない可能性も推察されます。
採掘データ
上流資産埋蔵量の内訳
英国の北海油田は2021年中に完全に売却しました。
採掘可能年数
ではこれがどの程度の量に相当するのでしょうか?
ENEOS発表の「統合レポート2021」によると、新たな探鉱開発がゼロと考えても約10年程度は持つ見込みのようです。
当社グループが有する石油上流資産の埋蔵量452百万バーレル(2020年度末時点、石油換算)は、現状の生産量(46百万バーレル/年)の約10年分に相当します。
(統合レポート2021より引用)
ただしこれは北海油田売却前の2020年4月発表時点でのデータであるため、新たな油田が開発されていないと考えると、現時点ではもう少し採掘可能年数は減っていると考えられます。
他のキャッシュフロー創出事業
ENEOSは石油・天然ガス開発事業を『基盤事業』として、次世代事業のためのキャッシュフロー創出を役割に位置付けています。
同様の役割は、石油精製事業や、銅資源開発/精錬などの事業にも割り振られていて、このうち銅関連の事業については、市況の高騰もあって現在の営業利益の1/3以上を占めます。
銅については、今後もENEOSに莫大なキャッシュをもたらしてくれる存在であると考えられます。
まとめ
ENEOSが保有する、石油および天然ガス権益の埋蔵量について見ていきました。権益の売却等もあり、埋蔵量は年々減少傾向にあります。
ENEOSの戦略的に積極的な開発を行っていないようです。
次世代エネルギーとして莫大な投資を行っているENEOSですが、水素事業や風力などの再エネ電力事業に関しては、まだ赤字であり収益に貢献できていません。
ENEOSにとって基盤事業の役割に位置付けられている石油・天然ガス開発事業ですが、このまま油田開発が進まないようであれば、近い将来に「キャッシュフローの創出」が減少してしまう状況に陥るかもしれません。
ENEOSの将来性を占ううえで、この辺りが不透明であると考えられます。
そういった理由から、株価で示される市場評価が低迷しているのだと考えられます。
ただし、このまま石油・ガス開発の上流開発が座礁するとは個人的には考えていません。