化学の解説

【化学】共有結合に対する非共有電子対の影響

化学結合の強さは、立体構造や電気陰性度など様々なパラメータによって影響を受けますが、非共有電子対は、結合の強さにどのような影響を与えるのでしょうか?
この記事では共有結合の強さに対する「非共有電子対」の影響について見ていきます。

非共有電子対は電子間反発により結合を弱める

実は非共有電子対があると、その電子間反発により、結合が不安定に(=弱く)なります。
例えばNやOやFなどは非共有電子対をもつため、それらが持つ共有結合はかなり弱いです。
下の例で、結合エネルギーを見ていきましょう。

  • NH2-NH2(ヒドラジン):159kJ/mol
  • HO-OH(過酸化水素):139kJ/mol
  • F-F(フッ素):158kJ/mol
参考:CH3-CH3(エタン):350kJ/mol

N-N、O-O、F-Fの結合エネルギーはC-C結合と比べてかなり低いことがわかります。
つまり、これらの結合は比較的、切れやすいと言えます。

周期表の下に行くとどうか

非共有電子対による電子間反発で、共有結合が弱められることがわかりました。
では原子半径の増大の影響を考えたいと思います。
周期表の下に行くほど原子が大きくなり結合が伸びますが、その結果、非共有電子対の反発が緩和するはずです。
つまり、非共有電子対による電子間反発の影響が薄れ、共有結合を弱める効果が小さくなるはずです。
では、同じ15族元素であるN(窒素)とP(リン)の結合を例に見てみます。

  • R2N-NR2:163kJ/mol
  • R2P-PR2:201kJ/mol

Nは第2周期の元素で、Pは第3周期の元素であるので、Pの方が周期表の下にあります。
(=Pの方が原子半径が大きい)
実際に、結合は強くなったのがわかります。
通常、原子半径が大きくなると結合の強さは弱くなりますが、今回は原子半径の増大が電子間反発の影響を緩和する方向に働いたため、結合が逆に強くなりました。

大きくなることで非共有電子対による反発の影響を弱める。

さらに周期表の下に行くと?

ではもっと周期表の下に行くと結合の強さはどうなるでしょうか?
同じ15族元素である、P(リン)とAs(ヒ素)で見ていきます。

  • R2P-PR2:201kJ/mol
  • R2As-AsR2:131kJ/mol

Pは第3周期の元素で、Asは第4周期の元素であるので、Asの方が大きい元素と言えます。
大きい元素の方が非共有電子対の電子反発の影響を緩和できるので、結合が強くなるのが先ほどの例でしたが、今回はどうかというと131kJ/molと小さくなってしまいました。
先ほど述べたように、基本的に原子半径が大きくなる方が結合の強さは弱くなるので、その影響が電子反発の緩和よりも強く出た結果と言えます。

大きくなりすぎてもダメ。

まとめ

第二周期の非共有電子対を持つ原子(N, O, F)と他の非共有電子を持つ原子の間の「単結合」は相対的に弱いです。(N-N, N-Cl, O-O, F-F, N-O, O-Fなど)
これは、非共有電子対の電子間反発が、結合の強さを弱めることが原因です。
原子半径が大きくなることで、電子間反発の影響を緩和でき、結合が強くなります。
しかし、大きくなりすぎても、逆に結合を弱める結果になります。

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