化学の解説

HDLコレステロールとLDLコレステロールの化学的な違いは?

HDLコレステロールとLDLコレステロールって、健康診断などでよく聞く名前ですが化学的にはどのような違いがあるのでしょうか?
HDLコレステロール(善玉コレステロール)って何なのか、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)って何なのか。
この記事では両者の違いを調べました。

一般的な知識

まずは基礎です。
コレステロールについて一般的に知られている知識を記載します。

LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがあり、増えすぎると動脈硬化を起こすので、悪玉コレステロールと言われています。HDLコレステロールは、余剰なコレステロールを回収するコレステロールで、善玉コレステロールと言われています。(引用:大正製薬)

コレステロールには、悪玉と善玉があるということです。

まあ皆さんよくご存じですよね。

共通すること

次に、HDLコレステロールとLDLコレステロールの違いを調べる前に、両者に共通することを説明します。

共通する役割は、どちらもコレステロールを運搬します。
HDLもLDLもコレステロールを運搬することが目的なのです。
LDLやHDLも以下に示すようなコレステロールという脂質分子を、血液中で運搬する能力を持った分子のことです。

コレステロールの構造式 ( Wikipedia )
コレステロール化学構造式
『HDLコレステロール』も『LDLコレステロール』も、コレステロール分子自体は共通です。

HDLとLDLコレステロールの違い

では『HDLコレステロール』と『LDLコレステロール』は何が違うのか?
これについて、説明していきたいと思います。

名前の違い

まず両者の名前の違いを比較します。

HDL:High-Density Lipoproteins
LDL:Low-Density Lipoproteins

両者の違いは、High-Density(高密度)かLow-Density(低密度)かになります。
何が高密度や低密度か?というとそれはリポプロテインがということになります。

リポプロテインという言葉が出てきましたが,リポプロテインとは「脂質タンパク質」の複合体のことです。脂質とタンパク質が,化学的な相互作用で結合したものを,リポプロテインといいます。そして重要なのが,コレステロールも脂質の一種だということです。

密度が高いリポプロテインが「HDLコレステロール」、密度が低いのは「LDLコレステロール」。

構造の違い

結論から言うと、結合しているタンパク質の種類が異なります。
両者ともに、コレステロール分子に(アポ)タンパク質が結合していますが、前述のとおり、コレステロール自体は同じ構造をしており、HDLとLDLの両者で全く違いはありません。
違うのはそのコレステロールを囲んでいるタンパク質の種類です。

HDLコレステロールとLDLコレステロールは、タンパク質の種類が違う!

HDLに含まれるタンパク質

アポ蛋白A-Iアポ蛋白A-IIなど
(HDLのアポ蛋白のうち90%以上がこの両者)

LDLに含まれるタンパク質

アポ蛋白B-100など

タンパク質はコレステロールより密度が大きいので、タンパク質をたくさんもっている方がHDL(High Dense)で、タンパク質割合の小さい方が密度の小さい(Low dense)なLDLということになります。

以下のように、HDLにはタンパク質が50wt%ほど含まれますが、LDLには25wt%ほどしか含まれません。

リポタンパク質のタンパク質種類
(引用: 信楽園病院 )

補足知識

「善玉」「悪玉」の根拠

コレステロールは疎水性ですので、そのままでは血液中に溶けません。
そのためタンパク質に覆われることではじめて、血液中で運搬されるわけです。

HDLの方がタンパク質の割合が多いので、コレステロールを運ぶ能力が高いと言えます。

逆にLDLはタンパク質が少ないので、コレステロールを運ぶ能力が低く、それ以上余分なコレステロールを運搬することができないことになります。
その結果、運搬しきれなくなったコレステロールが血管壁などに蓄積してしまいます。

つまり、HDLはコレステロール運搬能力が高く、体内の余分なコレステロールを回収できるので”善玉”と呼ばれ、逆にコレステロールを血液中で出してしまい血管壁に蓄積してしまうリスクのあるLDLについては”悪玉”と呼ばれてしまう、ということになります。

脂質はコレステロールだけじゃない

実は、HDLもLDLも脂質成分として保有しているのはコレステロールだけでなく、「リン脂質」「コレステロールエステル」「チルグリセライド」も保有しています。
LDLとHDL
( 引用: httpslipo-search.com )

構成要素の脂質部分がコレステロール1種類ではなく、リン脂質などその他の脂質も含まれているのですね

コレステロールと皮脂との関係

コレステロールは7~8割は体内合成されます。
主に飽和脂肪酸などの脂肪分から合成されます。
残りの2~3割は、食事から直接摂取されます。

皮脂にもコレステロールが含まれますので、その分体外に排出されることを意味します。

脂腺由来脂質には、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸、スクワレン、ワックスエステルが、またケラチノサイト由来脂質からコレステロール、コレステロールエステルがある。(中略)
脂腺が全分泌腺であるため、細胞の構成成分であるコレステロールやその脂肪酸エステルが皮脂中に2%程度検出される.
( 引用: 日本化粧品技術者会 )

まとめ

HDLコレステロールとLDLコレステロールの違いについて調べました。

HDLやLDLっていうコレステロールがそれぞれあるのかと思いがちですが、そうではなくて両者の違いはコレステロールに結合したタンパク質の種類にあります。

コレステロールを取り囲むアポ蛋白がHDLとLDLでは異なり、その種類によってコレステロール運搬能力が変化し、体にとって善玉になったり悪玉になったりするということになります。

以上、HDLコレステロールとLDLコレステロールの違いでした。

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