環境・エネルギー

【環境】バイオマスナフサとは?脱石油のバイオマス資源について詳しく解説

バイオマス資源の一つに、バイオマスナフサというものがあります。
この記事では、今後「脱石油」として期待される重要なバイオマス資源である”バイオマスナフサ”について詳しく解説します。

バイオマスナフサに取り組む背景

世界的な平均気温上昇やそれに起因するとされる異常気象の増加により、温室効果ガスを大量に放出する化石資源の使用量削減が求められています。

日本も2050年のカーボンニュートラル達成等目標を掲げており、二酸化炭素排出量の削減は急務です。

プラスチック等の原料として石油が大量に使用されている現在、植物ベースのバイオマス資源である”バイオマスナフサ”による脱炭素が注目されています。

バイオマス由来ナフサとは

バイオマスナフサとは文字通り、バイオマスからできたナフサです。
本来石油由来の成分であるナフサを、植物由来原料に置き換えたものをバイオマスナフサと言います。

バイオマスとは,植物木材廃植物油などの植物由来資源のことです。
ナフサとは石油からとれるC5~C10ぐらいの炭化水素群のことです。
通常、ナフサクラッカーと言う高温の分解装置にて、ナフサの熱分解を行うことでプラスチックや樹脂などの原料(エチレンなど)を製造します。

このナフサを木材や製紙工程の廃液などから作り出したものが、バイオマスナフサです。

ただしバイオマスナフサの成分は、石油由来ナフサと完全に同一ではありません
例えば、UPM社が販売しているバイオマスナフサの炭素数はおよそC6-C10の炭化水素群となっています。(SDSより)

バイオマスナフサの詳細情報
原料 パルプ化工程で副生する”トール油”を原料として製造。
構成成分 炭素数C6-C10の炭化水素。
化学的性質 沸点はMAXで210℃, 密度は775kg/m3(15℃), 硫黄分10ppm以下

(UPM社HPより抜粋)

そもそもナフサの正確な定義を説明しておくと、もともとは石油の構成成分群のことで,石油のなかにふくまれる沸点30-180℃の範囲の炭化水素(C5~C10ぐらい)のことを指します。原油によってもとれる成分の割合等は異なります。

石油でいうナフサも単一原料ではなく混合物で、なおかつ原油によって変わるので、バイオマス由来ナフサと一口に言っても、その構成成分はモノによってかなり変わると思われます。結局、ナフサクラッカーに放り込んで、エチレンなどの化学基礎原料が出来さえすればいいわけです。

またこのようにバイオマスナフサというバイオマス素材を原料にして作られたプラスチックは、バイオマスプラスチックに分類されます。

バイオマスナフサの使用方法

ナフサはもともと、石油会社または総合化学メーカーがもつナフサクラッカーと言われる高温分解装置にかけられることで、エチレンやプロピレンなどに分解されます。

C5~C10だったものが、エチレンやプロピレン、ベンゼンなどC2~C7ぐらいの化学物質になります。

ナフサクラッカーに投入して、エチレンやプロピレン、ブタジエン、ベンゼンなどのプラスチックや樹脂、医薬品などの原料となる化学物質がつくられるわけですが、バイオナフサも同様にナフサクラッカーに投入されます

ただし、100%投入するのではなく、石油由来ナフサにバイオマスナフサを混ぜて使用されるようです。

バイオマスナフサとナフサクラッカー1

バイオマス由来ナフサのメリットは

(メリット①)地球温暖化抑止(CO2排出量の削減)

バイオマスナフサで最も重要なのが、他温室効果ガス(GHG)の1種であるCO2の排出量の削減です。

バイオマス由来原料は、よく知られている通り、生育過程で大気中のCO2を吸収するので、最終的に燃やしてもCO2収支としてはプラスマイナス0であり「カーボンニュートラル」です。
つまりバイオマス原料で作ったプラスチックを使用する限り、それが原因で大気中のCO2が増加することは基本的にはありません。

日本政府も2050年にカーボンニュートラルの実現を目指していますので、バイオマスナフサは、その達成に向けた戦略の1つになり得ます。

バイオマスナフサは地球温暖化防止に役立ちます。

(メリット②)石油使用量の削減

ナフサは石油から取り出されますが、その石油などの化石燃料は「埋蔵量は残り50年・・」などと言われる通り、地球上に有限の量しかないと考えられています。
バイオマス由来原料で代替することで石油使用量を削減でき、化石資源の恩恵を次世代に受け継ぐことができます。

(メリット③)原料調達手段の多様化

石油などの化石燃料は「採掘可能年数が有限」という問題以外に、産油国が中東に集中しているなどの「地政学的リスク」も無視できません。
戦争など、なんらかの理由で供給が立たれたときに他の調達手段があることは重要です。
供給元の分散という観点から、バイオマス由来原料の選択にはメリットがあります。

バイオマス由来ナフサの欠点は?

①供給量が足りない

絶対的にバイオマスは供給量が足りません。
プラスチック、樹脂、衣類、医薬品など、身の回りのほとんどはナフサ由来ですが、一方で直感的にもわかる通り、バイオマス資源である森林などの植物は地球上に限られた量しかありません
そのため、これまで原油由来のナフサでまかなっていたものを全てバイオマス原料で代替することは、現状かなり難しいと言えます。

サトウキビなどの生物由来の資源を原料としたバイオマスプラも、まだまだ生産量が少ない。18年の世界のバイオマスプラ(非生分解性)製造能力は約120万㌧で、たとえフルに生産しても世界の全プラ製造量のわずか0.3%に過ぎない。

(エコノミスト 「脱炭素の落とし穴」 p.37)

②食料需要とのバッティング

また、よく言われる通り、バイオマス資源の多くはトウモロコシやサトウキビなど食料原料ですが、それをバイオマス資源として利用すると食料需要とバッティングするケースがあります。

③二酸化炭素吸収量の低下

本末転倒ですが、供給量を補うために過剰にバイオマス素材を利用すれば、森林伐採により森林面積が縮小し、逆に温暖化を促進するなどの悪影響も当然起こります。

森林の現存量が大きく成長量も大きな熱帯林を開発した場合、開発前よりも土地の二酸化炭素固定能が低下する。
さらに、開発によって土壌中の有機物の分解が促進され、二酸化炭素として大気中に放出される。
そのため、熱帯林を開発して生産されたバイオマス燃料は化石燃料の代替燃料となり得ないという指摘がある
(Fargione et al. 2008) 。

(引用 「バイオマスエネルギーは再生可能エネルギーなのか」)

④バイオマス素材の育成のためのエネルギー

バイオマス素材を育成できるベストな環境が常にあるとは限りません。
環境を整えたりすることで、エネルギーを使い、これも本末転倒ですが二酸化炭素排出量が増えます。

これらの解決策の1つとして、製紙工場のパルプ化工程における副生成物であるトール油や、廃棄植物油を使用できますが、あくまで副生成物などであるため量が限られます。

⑤価格が高い

これは再エネ関連ではもっともよく議論される問題ですが、バイオマスナフサについても現状、石油由来ナフサよりも2~3倍程度高いそうです。

国内では、三井化学が21年度下期からバイオマスナフサを使ったプラ製造を始める予定だが、カギとなるのはやはりコスト。同社の担当者は「生産する樹脂は化石由来原料に比べて2~3倍高くなる見込み。顧客がそれを認めてくれるかどうか、当社にとって賭けになる」

(エコノミスト 「脱炭素の落とし穴」 p.37)

再エネやバイオマス普及のために価格をどう抑えるか、というところが水素やアンモニアなどと同様に大きな課題です。

 

取り組んでいる企業は?

国内

基本的に石油化学メーカー、あるいは総合化学メーカーの守備範囲になります。
国内で先駆的に取り組んでいるのは、「三井化学」です。2021年10月までに、日本で初めて既存のナフサクラッカーにバイオマス原料を投入するとのことです。

三井化学は「エチレンプラント」を持っているので、そこにある自前のナフサクラッカーを使用して実証実験ができます。

参考:三井化学 バイオナフサでCNとバイオプラ加速、日本初

総合商社の豊田通商も三井化学と連携して取り組んでいます。

海外

Neste社は、今回の三井化学がバイオマスナフサを仕入れる仕入れ先です。

先ほど紹介したUPM社もバイオマスナフサを製造しています。

まとめ

脱炭素関連で注目のバイオマス由来ナフサについて解説しました。

様々なメリットがある一方で、まだまだ課題の多いバイオマスナフサ。
2050年のカーボンニュートラルを目指す日本にとって、二酸化炭素排出量を大幅に削減できる可能性のあるバイオマスナフサは、これからも利用が進んでいく可能性がありますが、今後の動向を注視する必要があります。

三井化学に続いて、エチレンプラント保有する他の国内製造会社、例えば三菱ケミカル東ソー丸善石油化学昭和電工ENEOSなども、今後バイオ原料を取り入れるかどうかは興味が持たれるところです。

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