脱炭素、カーボンニュートラル、電力不足、資源価格の高騰、などを背景に石炭火力に対する興味関心が高まってきていますが、石炭火力にはどのような種類や特徴があるのでしょうか。二酸化炭素排出量を中心に、ほかの電源との比較も含めて見ていきたいと思います。
石炭火力発電の種類とCO2排出量
まずは石炭火力の種類と発電効率についてそれぞれみていきたいと思います。
(経済産業省 資源エネルギー庁 資料より)
最も環境に悪い「SUB-C」と環境性能の良い「IGFC」を比較すると、1.5倍(50%)ほど効率がアップしています。
保有割合(国内の全事業者)
他の電源との環境性能比較
石炭火力がどれほど環境に悪いのか比較したいと思います。
石油、液化天然ガス(LNG)と比較し、石炭のCO2排出量はどうなのでしょうか。
グラフを見てわかる通り、日本で最も主流のタイプである超々臨界圧(USC)で、LNGの2倍以上環境負荷が大きいので、やはり石炭火力は環境に悪いと言わざるを得ません。
逆に言うと、LNG発電は石炭と比較してこれだけ環境負荷が小さいので、今後石炭に代わって電源の主力になるとも考えられ,天然ガスの需要は大幅に増すと予想します。
(経済産業省 資源エネルギー庁資料より)
各石炭火力の割合(日本)
高効率石炭火力の割合
日本において、環境負荷の小さい高効率な石炭火力はどれぐらいあるでしょうか。
2020年8月時点ですと、IGCC(石炭ガス複合発電)タイプが、全国におよそ2基(42万kW)あります。
発電量全体に占める割合で示すと、たった0.9%です。
非効率石炭火力の割合
では逆に、低効率な石炭火力はどれくらいの割合を占めるでしょうか?
SC(亜臨界圧),SUB-C(超臨界圧)の2種類は効率が低いとされる石炭火力発電ですが、意外にも日本ではまだまだこれらが主流であり、なんと全体の51.1%もあります。
(発電量ベース)
今後
このような環境負荷の大きい石炭火力については、順次縮小を進めているところです。
EUからは石炭火力の全廃を求められてもいます。
ただ、大手電力会社が建設する石炭火力発電所は、2000年以降は基本的にすべてUSC以上であった一方で、その他事業者が建設した火力発電所はほぼ全てSUB-CかSCでした。
また、IGCCは全国でまだ2基(42万kW)しかありません。
今後は、非効率石炭火力の早期廃止と、高効率石炭火力への移行、およびCCUS技術の導入や、アンモニア・バイオマスとの混焼などが急がれるでしょう。