おはようございます。日本時間の4/21早朝に原油先物価格(WTI)が一時マイナス40$を突破しました。今現在(4/21朝8時)も、価格は1ドルを切っており、歴史的な原油価格暴落です。なぜここまで原油価格が下がっているのか、またエネルギー企業への影響について考察します。
原油価格が下がった原因
①エネルギー需要の低下
まずコロナウイルス蔓延による、世界的なエネルギー需要の低下がまずバックボーンとしてあります。車も飛行機も使われていない現在、ガソリンやJET燃料が必要とされておらず原油需要が低下しています。
また、各国の生産調整がうまくいかず、原油は供給され続けていて明らかに供給過剰な状況が続いています。
そのため、供給が需要を上回り、価格が下がっているという状況です。
②貯蔵施設のキャパシティオーバー
そして、原油の貯蔵の問題があります。需要が減り続けた結果、原油貯蔵施設が満杯になってきています。
その結果、これ以上原油を引き取ることが出来ず、『もうイラネ!』という状況になり、『もはやお金上げるから引き取って!』ということで価格がマイナスになりました。
③WTIという地域的な問題
そして重要なのが、この『WTI(West Texas intermediate)』という地域的な問題です。WTI原油は世界的に有名な原油価格の指標とされていますが、実際はアメリカのテキサス州あたりで産出される特定地域の原油のことを言います。
このWTIの原油貯蔵タンクがこれ以上入りきらなくなっているのです。
通常、タンクが満杯になっても、タンカーなどに貯蔵すればそこまで問題にはなりません。しかし、このWTI原油に関しては、パイプラインでオクラホマというアメリカの内陸部にあり、海上で一時保管することが出来ません。
なのでこれ以上買うことができないのです。
また、原油先物取引では限月というものがあり、先物で購入した原油(今回は5月物)については貯蔵できなければ売るしかありません。
もうオクラホマには貯蔵できるスペースがないため「売り」しか選択できず、それがここまでの暴落を引き起こしています。
WTI先物の現物の受け渡しはオクラホマ州でつけることになっていますね。こんな場所。 pic.twitter.com/HHWaFTZ8MV
— じっちゃま (@hirosetakao) April 20, 2020
ちなみにこの『WTI原油』ですが、硫黄分が少なくガソリン留分を多くとりだせる軽質で高品質な原油で、スウィート原油に分類されています。
エネルギー企業への影響
私も三菱商事の株を保有しているので、原油価格下落の影響が気になっています。
今回原油価格が暴落しましたが、これは言ってみれば①WTIという特定の地域の原油が、②貯蔵施設の枯渇と言う問題で引き起こされた結果です。その結果アメリカ算出の原油は全体的に下がっていますが、これが世界中の原油で起こるとは考えずらく、即座に問題が生じると言うわけではないと思います。
石油元売り
WTI以外の原油も、すでに20$前後まで下がっている状況ではあるので、備蓄原油の評価損を計上するのは間違いありません。
なので原油元売り各社(ENEOS、出光、コスモなど)は、当面は厳しい局面が続くと思います。またこれらの企業は石油開発事業にも参入しているので、その点での損失も大きいです。
石油開発事業(E&P)
同様に世界中で原油価格が20$程度まで下がっているので、原油掘削などの事業を直接行っている国際石油開発帝石(INPEX)や石油資源開発(JAPEX)も、当面は厳しい状況がつづくかと。
JAPEXはアメリカテキサス州でのシェール開発に投資しているので、その点で損失を被ると思われますが、規模が小さいので影響は軽微です。
三菱商事や三井物産などの商社系エネルギー企業も、中東やアジアなども含め世界中に分散投資しているため、とりあえず致命傷は避けられると思います。
まとめ
WTI原油先物価格が、一時マイナス40$を突破するという歴史的大暴落が起こりました。
ただし、これはあくまでWTI原油に限った話であり、ドバイなどで産出される原油は現在20$以上をキープしております。
WTI含めアメリカで産出される原油は、現在かなり価格が下落しており、アメリカでの原油掘削やシェール開発に投資している企業は、かなりの損失を受けることが予想されます。
日本企業は中東やアジアなども含めリスクヘッジしているので、とりあえず大丈夫かなと思います。