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【2021年度】(信越化学が圧倒)化学大手業績ランキング

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2021年度の化学大手はどのような業績だったでしょうか。
化学業界は地味なので、あまり売上や営業利益などを正確に把握できていない方も多いと思います。
コロナ禍からの回復期にあたる2021年度(2021/4~2022/3)はどうだったか?早速ランキング形式で見ていきたいと思います。
・・やはり、信越化学は凄いです。

2022年3月期決算より。業種は繊維とトイレタリーも含めた広義の化学業界です。ただしパルプ業界は除いています。

売上高(兆円)ランキング10

まず基本となる売上高を見ます。
化学大手売上ランキング2021年度
合併を繰り返して大きくなった三菱ケミカルの売上げ額が他を圧倒しているのがわかります。化学大手の中では三菱ケミカルが規模としてはダントツで最も大きいと言えます。

営業利益(億円)ランキング10

次に営業利益額を見ます。
化学大手営業利益ランキング2021年度

1位は信越化学

1位は4兆円近い売上高のあった三菱ケミカルではなく、2兆円ちょっとの信越化学が1位となっています。
収益力には以前から定評のある信越化学ですが、2021年度は6,763億円も稼いでいて資源バブルに沸いている総合商社なみの利益を上げています。

日本の化学メーカーでほぼ唯一株式市場から評価されている信越化学ですが、2021年度も圧倒的な収益を示しており、コロナ禍も追い風にできていてるなどやはり凄いです。信越化学は凄い

営業利益とは、利益から販管費を引いたもののことです。
(そこから利息や法人税などを差し引いた値が純利益)

信越化学は何で稼いでいるのか?

信越化学は前年(2020年度)と比較して、営業利益が72.4%も増加しましたが内訳は以下のようになっています。

信越化学工業(2022年3月期決算資料)より


『生活環境基盤材料』の伸びが特に大きいですが、これは具体的には塩ビや苛性ソーダの事業です。塩ビの生産については米国のシンテック社の買収が奏功しているようです。
『電子材料』はシリコンウエハーやフォトレジストなどの半導体材料など、『機能材料』はシリコーンオイルやセルロース製品など、『加工・商事・技術サービス』は半導体などのデバイスや検査装置などです。

信越化学は設備投資を積極的に行っていて、コスト競争力に極めて優れます。
そこが塩ビやシリコーンなどのコモディティを売っているにも関わらず、利益率が優れる1つの理由です。
半導体向け製品は、半導体材料の世界的な不足も追い風になっています。

懸念は塩ビに関しては原材料価格のさらなる高騰や米国住宅向け需要の減速などです。米国はインフレにより住宅の着工戸数が減少に向かう可能性があるので注意が必要かもしれません。

営業利益率(%)ランキング10

利益率を見ると信越化学の圧倒的凄さがわかるかと思います。
化学大手営業利益率ランキング2021年度

信越化学が株式市場から評価される理由もよくわかりますね。

また、東ソーと日東電工はかなり地味なので注目度が低いかもしれませんが、利益率15%を超えており躍進しています。ちなみに2022年6月10日終値で東ソーはPBR0.81倍、PER5.95倍、配当利回り4.46%とかなり割安です。日東電工はPBR1.76倍、PER12.03倍、配当利回り2.46%と、国内化学メーカーにしては市場から評価されています。

まとめ

2021年度の化学業界について、業績のランキングを見ていきました。
化学業界全体としてみると、営業利益率が10%を超えている企業も多く、かなり好調な年度でした。

売上では合併後巨大になった三菱ケミカルがトップで、稼ぐ力としては信越化学が他を圧倒している例年通りの結果となっていました。

東レなどの繊維メーカーについては航空機向け炭素繊維などがコロナで売れなかったため、業績が悪いのは仕方ないところがあると思います。
既にアフターコロナを見据えた受注もあるようで、これからの巻き返しはほぼ確実です。

とはいえ今後の見通しについては、素材の原料となる原油の価格が1バレル120$(WTI)を超えるなどかなり高騰しており、原油高騰分を製品価格に転嫁する必要がありかなり厳しい可能性があります。
特に総合化学メーカーについては、あまり原油の上昇分ほどはナフサ価格に転嫁できていないようで、三菱ケミカルや三井化学は少し厳しいかもしれません。

ただし同じ化学業種でも信越化学や東レなど、競争力の高い製品を持っている優良企業については、インフレ分を製品にしっかり転嫁できる可能性があり、そこは動向を見守っていきたいと思います。

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