業界研究/企業分析

【2019年度】紙パルプ・製紙業界の動向をかんたんに

2019年度の紙パルプ業界はどのような状況でしょうか。
市場の縮小やそれに伴う海外進出など、日本の紙パルプ・製紙業界の動向を見ていきましょう。

市場は縮小傾向

紙パルプの国内市場は既に頭打ちの状態で、徐々に市場規模は縮小している現状となっています。

とにかくデジタル化の波は歯止めを知らず、2006年あたりのピーク時には年間3200万トン以上が生産されていた紙・板紙ですが、現在は約2600万トンあたりまで落ちこんでしまいました。
さらに年々確実に減少しており、回復の兆しが見えていない状況です。

日本製紙は、約2割にあたる工場生産能力を落とすなど、紙パルプ業界は非常に厳しいビジネス環境となっています。

海外に活路

では、日本の紙パルプ業界は経営危機に瀕しているのかというと、実はそうでもありません。
事業買収といった国内における事業再編などの他、海外マーケットでの成功により収益を上げています。

例えば、業界最大手の王子製紙は、この猛烈な逆風の中、なんと2019年度にこれまでの最高益を更新しました。
これは国内需要で達成したわけでなく、ブラジルや中国・東南アジアなどでの海外事業が功を奏したためです。

海外(特に新興国)での段ボール需要は特に凄い

王子製紙は海外売上比率が既に30%を超えるなど、完全に国内需要の冷え込みを見越して対策をとっています。

他の競合他社も同様に、アジア地域をメインとする海外で、活路を見出そうとしています。

それだけでない紙パルプ業界の可能性

紙パルプ業界への追い風は海外進出だけでは有りません。

新素材への期待もあります。
セルロースナノファイバー』は近年業界を賑わす新素材です。
“軽くて強い”という産業用途として最も理想的な性質をもった素材であるため、東レや帝人などが主力で製造している”炭素繊維”を超える可能性が期待されています。

まだ実用化にはほとんど至っていませんが、王子製紙・日本製紙・レンゴー・大王製紙など、製紙会社大手の各社がこぞって研究開発を推し進めています。

特許という知的財産の面でも活発な競争が行われてきています。

化石燃料を用いないクリーンな素材であることも注目を集めています。
実用化に立ちふさがる技術的なハードルを超えることができるかどうか。

紙パルプのさらなる可能性~新エネルギー~

紙パルプの可能性として、先ほど上げたセルロースナノファイバーはかなり有望ですが、まだ他にもあります。

それが『バイオマス発電』です。

バイオマス発電とは使わなくなった木材などをエネルギーとして活用する発電方法で、CO2の排出量が少ないという時代の要請に応えた素晴らしい特徴があります。

木材チップなどのバイオマス資源を手に入れやすい製紙業界各社は、バイオマス発電にも力を入れて事業展開しています。

まとめ

紙パルプ業界はデジタル化による国内の紙需要の冷え込みなど、ビジネスとして逆風にさらされているのは事実ですが、国内での事業再編海外事業からの収益により、今のところそこまでマズイ状況にはなっていません。

また段ボール需要の増加や、高品質なトイレットペーパーなどを求めたインバウンド需要の増加も、紙パルプ業界のプラスの材料です。

王子製紙が2019年度に過去最高益を更新したり、バイオマス発電が注目されるなど、明るい話題も少なくありません。

セルロースナノファイバーという期待の新技術も登場しており、紙パルプ業界は意外と将来的に楽しみな業界だと言えます。

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