環境・再生エネ

【バイオマス】セルロース系バイオエタノールの現状と課題(簡単に!)

現在、クリーンエネルギーの1つとして注目されているのが『セルロース系エタノール』です。俗に言う『バイオマス』の1つです。
トウモロコシなどの食用資源を用いたバイオマスが第一世代バイオマスと言うのに対して、木材などの非食用資源を用いたバイオマスを第二世代バイオマスと言い、期待されています。
しかし、期待値は大きいこのバイオマスですが、商業化についてはまだまだ進んでいないというのが現状です。
一体、何が問題となっているのでしょうか?簡単に解説しました!

セルロース系エタノールについて

セルロース系エタノールは植物由来のエタノールです。
エタノールは燃料として利用できます。
植物由来なので環境に良く、非食用植物を利用できるのでニンゲンにも優しい特徴があります。

どんな利点があるのか?

バイオマスなので環境に良い!

バイオマスですので、まずは「カーボンニュートラルで地球温暖化防止に貢献」「石油枯渇後の代替エネルギーになり得る(=エネルギーセキュリティー)」などのメリットがあります。

非食用の植物資源を利用できる!

とにかくセルロース系エタノールは”非食用”の植物が由来という点がメリットです。
トウモロコシなどの
食料と競合しないという点が極めて重要です。

セルロース系エタノールは廃材などの不要な植物資源を利用できるため、真に環境に良い可能性を秘めています。

過去を振り返ってみると、第一世代バイオマスはトウモロコシなどの食料を原料としてきたため、食料価格を高騰させるなどの問題を引き起こしてきました。

本来食用のものを燃料にするのは、なんかおかしい感じがしますよね。

セルロースって何?

セルロースについて簡単に説明します。
セルロースは、植物の細胞壁における構成成分です。
割合としては以下のようになります。

植物(樹木)の細胞壁の組成(だいたい)
化学物質名 割合
セルロース 35-50%
ヘミセルロース(キシロース) 20-30%
リグニン 15-35%

セルロース:グルコースのポリマー
ヘミセルロース:キシロースのポリマー

トウモロコシなどの場合、”デンプン”を単糖にまで分解しエタノール製造に利用しますが、これは比較的容易です。
一方、”セルロース”や”ヘミセルロース”をグルコースやキシロースを分解するのは結構大変であり、ここにセルロース系エタノールの技術的課題があります。

セルロース系エタノールの現状は?

商業規模のプラントはかなり少ない

現在、世界で稼働している商業規模のセルロース系エタノールプラントは、2017年6月時点でたったの5基です。

また、2010年にアメリカエネルギー省(DOE)が支援していたセルロース系エタノールプロジェクトは全部で29ありましたが、現在までに操業にたどり着けたのは「Abengoa」「DuPont」「Poet-DSM」の3基だけという状況です。

参考:
ペトロテック P465『セルロース系バイオエタノール商業化への道のり』 池應真実 日揮

セルロース系エタノールの課題

コストが高い

上記の通り、セルロース系エタノールの現状は厳しいものがありますが、何が商業化を難しくしているのでしょうか?

バイオマスは主に自動車の燃料としてのユースケースが想定されているため、基本的にはガソリンとの価格の比較になります。

しかし、原料コストのみでエタノールはガソリンより高価になる場合が多いのが実情です。
(原油価格が60ドル/bbl, 収率が70%以下)

また、エタノールはガソリンと比較して25%程度燃費が低いため、パフォーマンスもやや劣るという問題もあります。

技術的ハードルが高く研究開発費も膨大

セルロース系エタノールはサトウキビやトウモロコシなどの従来型の材料に比べて、『糖化』処理が難しいという課題があります。それは構成成分であるセルロースとヘミセルロースの糖への分解が難しいからです。

濃硫酸とマイクロ波を組み合わせる方法や、酵素を使用する方法などが開発されていますが、まだ発展途上という段階といえます。
酵素技術に関しては主に花王bitsが主導で開発

加えて、セルロース系エタノールの材料となる樹木の安定供給も課題ですし、工業生産レベルのスケールアップも問題となっています。
バイオマス資源の開発は主に日本製紙が、工業生産に関しては日揮が主導で開発

改善策

ではセルロース系エタノールについて『改善策』はないのでしょうか?

全部代替はコストが高いのでガソリンに混ぜて一部を代替


全部はガソリンを代替できなくても、一部を代替すると言う発想があります。
経済産業省でも2010年の『エネルギー基本計画』において、2020年までにガソリンにバイオエタノールを3%以上導入するという計画を発表しました。
これにより、コストの増加を抑制しつつ、セルロース系エタノールの産業創出機会を作ります。

また、例えばブラジルは食料(サトウキビ)由来ですが、ガソリン依存度を下げるために、エタノールを5%入れるなど国策として推進してきました。
ブラジル政府はエタノール業界に、1979-1990年頃にかけて2兆円規模の資金を投入した実績もあります。

燃料電池車への活用


エタノールの改質による水素の製造とその水素を利用した燃料電池車の製造は、エタノールの可能性の一つです。

セルロース系エタノールをそのまま燃料として使うのではなく、エタノールから水素を取り出してその水素を活用します。

例えば、日産のe-Bio Fuel-Cell技術は、エタノールを水蒸気改質した水素を燃料電池車(FCV)に活用しています。

製造コストを抑える

あとは原料コストを低く抑えるための方法の確立が必要です。
製糖工場にエタノール製造工場を併設するなどで、運搬コストを下げ、トータル的な製造コストを下げられる可能性があります。

その他、トウモロコシなどの第一世代バイオマスの実の部分は食用として利用し、茎や葉の部分をバイオマスとして利用するという方法も考えられています。

無駄がない!

燃料以外への応用

基礎化学品への活用も考えられます。
現在の社会では、衣類からプラスチック類から何から何まで『石油』由来の炭素源を使用しています。

そこでセルロース系エタノールの技術で培ったセルロースの糖化技術を利用し、付加価値の高い化学製品の事業を行うことなどがが考えられます。

まとめ

セルロース系エタノールは食糧を使わないバイオマスです。
そのため食糧需要とバッティングせず、注目されています。

しかし、コストメリットなどの点で困難を抱えており、大規模な商業化については発展途上の段階です。

今後はバイオマスをベースにした低炭素で持続可能な社会へ向けて、産学一体となった取り組みが期待されます。

参考:
ペトロテック P465『セルロース系バイオエタノール商業化への道のり』 池應真実 日揮

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