原料炭と一般炭の価格が逆転しているようです。
通常は原料炭の方が高価ですが、2022年7月現在、一般炭すなわち燃料用の石炭が世界的に高騰しています。
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原料炭vs一般炭
まずは図を見てもらいましょう。
上が原料炭(白線グラフ)で、下が一般炭(黄色線グラフ)です。
Thermal coal is $120 a ton more expensive than coking coal pic.twitter.com/MAdHSPSQMJ
— Doomberg (@DoombergT) July 6, 2022
2017年から2022年の価格推移です。これまでは原料炭の方が一般炭よりだいたい2倍程度価格が高かったことがわかります。一般に、石炭は産地によって同じ石炭でも価格はまちまちですが、このグラフでは両方とも同じオーストラリア産の石炭価格を表示しています。
原料炭が高い理由ですが、高品質な原料炭は貴重で、優良な鉱山は限られているためです。
(参考:「石炭の分類について」 p.14)
そのため原料炭は価値が高く、普通は原料炭の方が、どこでも採れる一般炭より高価です。
しかし原油価格が100$を超える昨今、一般炭の価格が上昇しています。
直近では一般炭が400$前後、原料炭がそれよりも大幅に安い200$後半で取引されています。非常に珍しい状況です。
理由は?
一般炭の価格が高騰しているのは、ウクライナ問題等を背景としたエネルギー価格高騰の影響しています。
逆に原料炭の価格が下落しているのは、景気悪化の影響です。
原料炭は製鉄用と用途が限られるため、世界経済の悪化を背景に鉄鋼需要の低下から値下がりしているとみることができます。
とにかく現在は、発電用途の資源がひっ迫しており、最も手軽に発電できる石炭への需要が増大しています。
疑問
原料炭を燃料として使えばいいのでは?という当然の疑問も湧いてきます。
しかしどうやら原料炭を燃料として発電用途に使用するのは難しいようです。
あまり資料がなく、理由がまだ探し切れていませんが、恐らく原料炭の粘結性(高温で流動し、さらに高温で固まる)という性質が発電に不向きなのではと予想しています。
Depends: hard coking cannot, it has too many volatiles in it, and it swells under heat.
semi soft and PCI can be used as thermal and often are in weak coal market conditions— Deskjob (@Deskjob_) July 15, 2022
I’m plant manager of a coal plant. Can’t be done. Runs too hot
— Razz M’Tazz (@gene_grindle) July 16, 2022
Coking coals are metallurgical coals and used for steel making and different ash content than thermal coals. Both are different..
— Lancelot (@Lancelo40668045) July 15, 2022
一般炭権益を保有する企業は?
総合商社は石炭の権益を多く保有していますが、三菱商事はほぼ全て原料炭です。
丸紅も恐らくほとんど原料炭です。
どこが一般炭権益を保有しているかというと住友商事と双日が比較的一般炭も保有しています。とは言え各社原料炭へのシフトは進んでおり、双日は20年度が推定80%程度は一般炭であったのに対し、直近は50%以下まで減っています(販売量ベース)。
ちなみに三菱商事の石炭権益は原料炭ですが、全てオーストラリア産です。高品質と言われています。
まとめ
本来高品質で高価格な原料炭が、低品質である一般炭よりも価格が低下している逆転現象が起こっていることをお伝えしました。
その理由は1つは世界的なエネルギー不足であり、もう1つは中国を筆頭とした世界的な景気減退により鉄鋼需要が減衰していることです。
本来は高品質であるため一般炭より上位のグレードとされる原料炭。これも石炭火力プラントで燃やせるとよいのですが。。